
「ポッカリと穴があく」そんな気持ちで迎えた今年の正月、父が永眠した。大きい何かを無くしたような感じだ。だけど、父は形にはないが、いろいろなものを私に残していった。それをあげたらキリがないが、父はいつも私に、「自分なりでいいぞ。」そんな言葉を投げかけていたような気がする。生前の父がそうであったように、そんな生き方はかっこいいし、好きである。自分ではやっているつもりでもまだまだ・・・・・・。是非こだわっていきたいと思う。
遠藤康行
鳥の声で目がさめた。意識の向うから、その声は近づいてきた。
聞いたことのある懐かしい声。カーテンをそっと開けてみると、ベランダのフェンスにみどり色のインコがいた。
静かに、静かに窓を開けて、手をのばす。彼はじっと私を見た。首をかしげて私を見た。
「おいで」
彼はまた首をかしげ、フェンスの上を歩いて、少し鳴いた。なんだか迷っているみたいだった。
「おいで」
羽をひろげて翔んだ。もう少しで指先に触れそうなくらいだった。
けれど、彼は翔んで行った。屋根のむこうへ。みどりときいろの羽をひろげて。
そして、私は、『ライ麦畑』のホールデン・コールフィールドを思い出す。
セントラル・パークの家鴨たちは、池が凍ると一体どこへ行くのかな。どっかへ飛んで行っちまうのかな。
佐々木佳子

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